インドネシアの小学校英語教育事情

〈インドネシア〉英語の授業が大好きな子どもたち。教科書を使ったくり返し学習が中心。

公立小学校の2年生の英語の授業風景。

約50人の児童が1クラスで学ぶ。

 大小さまざまな島が連なり、約300もの民族で構成されるインドネシア共和国。この国の小学校では、公用語のインドネシア語はもちろん、ジャワ島ならジャワ語、バリ島ならバリ語というように各民族の言語の授業もおこなわれている。第二母国語の授業だ。

インド洋上に点在する広い国土に多民族が生活しているため、地域によって教育のレベルも方法もまちまちだが、首都のジャカルタや世界的な観光地、バリ島などでは英語教育が進んでおり、多くの公立小学校で英語の授業がおこなわれている。

たとえばバリ島の公立小学校、南デンパサール第四小学校では、2000年から4年生以上の児童へ英語教育をスタートさせた。1年生からの全児童が対象になったのは2008年だ。同じ地域の公立小学校でも開始時期や指導法などはさまざまで、各校に任されている。この学校では、どの学年も英語の授業は週に1回、2時間おこなわれる。バリの小学校は教科担任制。1学年に1クラスしかないので、ひとりの英語教員が全学年を担当している。

授業はまず、宿題のこたえあわせから始まる。指名された子どもがホワイトボードにこたえを書いたり読み上げたりして、前回のおさらいをする。それが終わると、今日のメインの学習に入り、単語のほか、たとえば2年生の授業では“Where do you want to go?”—“I want to go to ….”といった会話表現を学ぶ。教科書は政府の指導のもとに作成されたドリル式のもので、1回の授業のなかで同じことを何度も書いたり読んだりして、単語や表現をおぼえていく。

授業中、先生が「こたえがわかる人!」と聞くと、クラスのほとんどが手をあげる。みんな英語の授業が大好きで、積極的に参加しているのだ。楽しく勉強したあとは、今日の宿題が出されて授業が終わる。1〜3年生は単語や短い会話表現のみだが、4年生になると文法教育も始まり、徐々に難易度は増すという。

ちなみに、バリ島にも私立の学校が何校かある。そのうちの一校、アノグラ・デンパサール小学校の場合は、公立校よりも少人数のクラスで、インドネシア人教員による英語の授業のほかに、オーストラリア人教員による授業もおこなわれている。また、すべての授業や日常会話を英語でおこなう有名進学校もある。

経済的に余裕のある家庭では、小学校の授業だけでは使える英語力が身につかないと考え、塾に通わせるケースもふえている。耳がよくリズム感に優れたインドネシア人は一般的に語学習得が得意で、基本的な英会話力を身につけるのが早いといわれている。

文/田尾蓮果 写真/岡田みわきち  コーディネーション/ホリコミュニケーション

●『子ども英語』2011年2月号(アルク発行)連載「世界の小学校英語教育事情」より