ハワイの小学校英語教育事情

〈ハワイ州〉1年目はフォニックスを活用。読み書きに重点を置く。

小学1年生向けのリーディング教材。1ページに1文といったレベルから読む練習を始める。

授業開始前におこなわれる朝学習の時間。この日のテーマは読書。

授業開始前におこなわれる朝学習の時間。この日のテーマは読書。

ハワイの公立小学校は、日本の幼稚園年長にあたるkindergarten(幼稚園)が1年間と、小学5年生までの合計6年間。英語教育は1年目から始まる。子どもたちは会話ができても、読み書きはほとんどできない状態で英語をスタートする。

オアフ島東部の公立小学校では、アルファベットの発音を教えるため、まずフォニックスに取り組む。たとえばBを学ぶ場合、b、[b]、beatingと言いながら、子どもたちに机を打つまねをさせる。体を動かすことでおぼえも早くなると担当の先生は言う。また、授業はボランティアの保護者がサポートに入り、児童ひとりにつき毎日5〜10分、1対1で発音を指導する。アルファベットをきれいに言えるようになると、but、bud、putといった単語を読む練習をし、その次はやさしい英語で書かれた本を読む練習をする。こういった活動を続けることで、学期が終わるころには、ほとんどの子どもがかんたんな本を読めるようになるという。

幼稚園と1年生のクラスでは、毎日英語の授業がおこなわれる。授業は1コマ45分だが、2コマある日もあるため、1週間に5、6時間は英語を学ぶことになる。
1年生のライティングの授業では、絵について説明する文や本の感想文、日記など、つづりは間違ってもいいので、とにかく「書かせる」練習に力を入れる。週1回のスペリングテストが始まるのもこの時期だ。

高学年には歴史・伝記・物語がまとめられた7cmほどもある分厚い教科書とそれを補足するワークブックが与えられる。なお、教科書は学校が所有するため年度が終わると返却するが、関連教材のワークブックは各自に提供される。

2001年、ブッシュ前大統領が政策“No Child Left Behind”を掲げた。すべての児童の学力を一定ラインに到達させることを目的としたもので、毎年1回、3年生から5年生を対象とした学力テストHSA(The Hawaii State Assessment)が実施されることになった。採点結果が公表されることもあり、授業における国語(母語である英語)と算数の比重が重い。現在、国語の授業は4年生、5年生とも週10コマおこなわれている。一方で、体育や美術の時間が極端に減ってしまい、ある学校では4年生の美術の授業は年に数回程度だという。

「かつては形容詞や副詞の定義に文法などを学んだが、今は読解力により力を入れた授業をしている」と公立小学校の先生が話すように、子どもたちは本の内容を深く読み込み、自分の立場に置きかえてみたり、筆者の意図を読み取る力をつけたりして、分析力や問題解決力、クリティカルシンキング(批判的思考)の習得を重点とした学習法にシフトしている。
ハワイ州では、外国語は週1時間、講師を招いてハワイ語の授業をおこなう。低学年は歌や本の読み聞かせ 、高学年はかんたんなフレーズをおぼえたり、楽器を演奏したりして、ハワイ語に親しむ活動をおこなっている。

文・写真/堀内章子

●『子ども英語』2009年11月号(アルク発行)特集「世界の小学校英語教育事情」より