ニュージーランドの小学校英語教育事情

〈ニュージーランド〉少人数のグループで学ぶ個性重視の英語教育。

少人数グループで授業をおこなうため、ひとり一人の能力にあわせた指導がおこなえる。

授業で使う教材は、教育省が配布するリーディング用の本や学校独自で購入したゲーム、ラップトップパソコンなどがある。

ニュージーランドの公用語は、英語とマオリ語(先住民族マオリの言語)、そしてニュージーランド手話の3言語である。公立小学校の授業は、ほぼ英語でおこなわれている。1989年に成立した教育法(The Education Act)により、教育省が定めるカリキュラムにそって、学校独自のプランを設定できるようになった。語学教育も地域や生徒の特色にあわせた個性豊かなものになっている。

公立小学校の授業は、時間数もカリキュラムも学校ごとに異なる。英語のカリキュラムは、主にリーディング、ストーリーライティング、オーラル・ランゲージ、ハンドライティング、スペリングの5つ。

ここでは、都市部にある公立小学校の英語の授業について、一般的な例を紹介する。まず、リーディングの授業は月曜日から金曜日の毎日1時間、グループ別におこなわれる。1グループの人数は4、5人。これがひとつの教室に4〜6グループ程度集まり、ひとりの教師が全体を指導する。ニュージーランドの英語教育は「少人数の能力別グループで授業をおこなうこと」を特色にしており、子どもたちは自分のレベルにあったグループで授業を受けることができる。グループは学期ごとにおこなうテストをもとに決められ、さまざまな年齢のメンバーになることもある。授業では「シェアブック」と呼ばれる大きな本を用いて、教師が句読点や韻、発音などを指導したあと、レベルに応じた本をグループで読む。

ストーリーライティングは、月曜日から木曜日の毎日1時間おこなわれる。学年が上がるにつれ、詩や日記、ニュースといったさまざまな文章の書き方を学ぶ。

オーラル・ランゲージ、ハンドライティング、スペリングは、それぞれ週1回30分の授業がおこなわれる。オーラル・ランゲージは、数名の児童がニュースを発表し、ほかの児童や先生がそれについて質問をする、リスニングとスピーキングに焦点をあてた授業。発表者は適切な声の大きさや明確な話し方などを学ぶ。ハンドライティングでは、ペンの持ち方や正しい姿勢を学ぶ。アスファルトにチョークで文字を書くユニークな授業もある。スペリングは、各自が課題を与えられ、この時間に学んだ内容が月曜から木曜の宿題となり、金曜にテストがおこなわれる。

一般的にマオリ語の授業は、歌やあいさつなどの初歩的な内容がほとんどであるが、マオリ人が多くいる地域の小学校には、マオリ語でおこなう授業もあり、マオリ語の教育に力を入れる学校もある。また、数は多くないが、外国語を勉強する小学校もある。英語を第1言語としない児童のためのESOL(English for Speakers of Other Languages)を設けている小学校もある。

文・写真/イーディ康子  コーディネーション / ホリコミュニケーション

●『子ども英語』2009年11月号(アルク発行)特集「世界の小学校英語教育事情」より