スペインの小学校英語教育事情

〈スペイン〉幼稚園年少から英語教育がスタート。小学校では週3回の授業。

授業は子どもたちになじみのあるテーマからスタート。授業はオールイングリッシュで進められる。

スペインでは、フランコ独裁時代の1960年代ごろ、小学校(6歳)から英語教育が始まった。それ以前は、フランス語を第1外国語として学ぶことが多かったが、現在では9割の学校で英語を第1外国語として学んでいる。また1990年の教育法の改正により、幼稚園年少にあたるプリスクールでも英語を学ぶようになった。

英語教育のカリキュラムは学校ごとに異なるが、現在は、プリスクールの3歳または4歳から開始されるのが一般的だ。遅くとも6歳の小学校入学時に開始することが決められている。スペインでは3〜5歳コースのプリスクールが小学校に付随している。この3年間は義務教育ではないが、ほとんどの幼児がプリスクールに通う。

プリスクールの英語の授業は、50分間の授業を月に2回、クラスを半分に分けて12人ほどの少人数でおこなわれる。指人形、DVD、CD、フラッシュカードなどを使って、英語に親しむところから始まる。最初から授業はオールイングリッシュでおこなわれ、教科書は使われない。まずはかんたんな動物の名前、顔のパーツ、色の名前、1〜5までの数字、野菜やくだものの名前など、実生活でよく使う単語や、授業でよく使うフレーズ“Close the window.”などから学んでいく。

プリスクールから英語教育がおこなわれるのは、年齢が低いほど、言語習得がスムーズであること、また英語を学ぶことを日常化させることが大切であること、さらにほかの素質を伸ばすためにも英語という違う言語を学ぶことが有効であると考えられているからである。

小学校では、担当教師が60分の授業を週3回おこなう。ここでも授業はオールイングリッシュ。オーラル重視の授業が進められ、少しずつ読み書きも学ぶ。小学校卒業時には基本会話ができるレベルをめざす。

英語教育に関する政府の新しい取り組みとして、昨年、英語の短期集中夏期コースが実施された。小学校5、6年生と中学1年生までの1,600人を対象に、8月に2週間、国内の全寮制の施設で24時間英語のみを使って生活を送るというプログラムだ。このプログラムへの参加費用として、1,200人に446ユーロ(約58,000円*)、400人に146ユーロ(約19,000円*)が支給された。

スペインではスペイン語のほかに、5つの地方公用語(カタルーニャ語、ガリシア語、バスク語、バレンシア語、アラン語)が存在する。たとえばカタルーニャでは、第1言語のカタルーニャ語で授業を受け、小学校に入ってからスペイン語の授業が始まる。スペイン語よりも英語を先に学ぶ学校が多いが、それはカタルーニャ語とスペイン語が似ているので、混乱を避けるためである。まずはしっかりとカタルーニャ語、次に第1外国語として英語を学び、そのあとにスペイン語を学ぶ、という順序になっている。このようにスペインでは、多言語を並行して学ぶことで、言語能力の養成が進められているのである。
文/林 有紀 写真/Marta Añaños  コーディネーション/ホリコミュニケーション

●『子ども英語』2010年4月号(アルク発行)連載「世界の小学校英語教育事情」より