オランダの小学校英語教育事情

〈オランダ〉小学校3年生から英語は週4回。テレビ番組を積極的に活用。

教室では、円になったり、相対したりして座り、互いにスムーズに会話ができるようにする。授業内容には子どもたちの興味を引くような工夫がされている。

オランダの小学校では1970年代初期、英語が義務教育課程に試験的に導入された。現在、英語は必須科目として、小学校3年生から週4回、授業がおこなわれている。子どもたちが最も好きな科目として人気が高い英語だが、それは英語圏で製作されたテレビ番組を授業で積極的に活用していることが理由のようだ。

英語圏で製作された子ども向けのテレビ番組がオランダで放映される場合、その大半は吹きかえではなく、英語のままで、字幕付きで放映される。子どもたちは大好きなキャラクターやアイドルたちが使う英語を聞き取り、字幕を追いながら理解する。

学校の授業では、英文法はまったく習わない。英語を聞き取って理解し、そして話すことに重点を置いて、授業がおこなわれている。教科書はなく、コンピューターが活用されており、英語とオランダ語のスペル比較が組み込まれたしりとりや七並べなどのゲームをしながら英語を学んでいく。また教師といっしょに英語のヒット曲を歌うなど、自然に英語が口から出てくるまで、こうした活動が何度もくり返される。楽しい授業のためか、子どもたちのほとんどが、英語好きになり、理解度も発音も上達していくという。

英語の授業をおこなっているのは、オランダ人の教師であり、母語が英語である教師が英語の授業を担当することは皆無だ。担任が一般科目に加えて、英語も教える。ただその背景には、多くのオランダ人が、高校卒業と同時にイギリスへ3年程度留学して、本格的に英語を学んでおり、それぞれの教師が流ちょうに英語を操れることがある。

もちろん教師自身の工夫もある。ある教師は「効率よく学ばせるためには、子どもたちが追う流行に敏感になることが必須だ。教材には斬新さと変化を持たせる工夫が必要。カリキュラムにも随所に、斬新さと変化をもり込むことが大切だ」と言う。

オランダは海外貿易に頼りつつ、国力を強靭にしてきた歴史がある。国際間で交渉する際にまず必要なのは、外国語を駆使すること。そのため、英語の基礎を小学校卒業時までに身につけることが、子どもたちの将来のためには必要不可欠である。

「ぼくはhipでcoolなsoccerのsupporterなんだ!」とは、8歳になるヨハンくんのことば。彼が日常使用することばには、高い頻度で英語が登場する。ヨハンくんのように、小学生が母語に英語をまじえて話すことに、保護者を含めたおとなが、まゆをひそめるのではなく、「アカデミックでトレンディ!」と大歓迎するオランダ。何よりも、楽しく学べる指導法が将来の英語習得への鍵と言えるだろう。
文・写真/かおるホーフアッカー  コーディネーション/ホリコミュニケーション

●『子ども英語』2010年7月号(アルク発行)連載「世界の小学校英語教育事情」より