第8回 Global Mom’s #2
親として語れること

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お子さんの留学を検討されているお父さん・お母さんの中には、海外で生活した経験がある方や、外国にルーツのある方もいることでしょう。そのことについて、お子さんにはどんな風に伝えていますか? 現在の子育てや教育方針には、どう影響しているでしょうか?

親自身の異文化に対する関心や価値観、そして体験談は、時として子どもにも大きなインパクトを与えます。留学やグローバル教育を考える際には、「親として語れること」を意識してみるのも良いでしょう。そこで今回は、幼少期にアメリカで身につけた語学力とグローバルマインドを活かして、親子向けに魅力的な多文化共生プログラムを提供している Global Momをご紹介します。

 

「好きなこと」「興味・関心」が一緒なら言語の壁は越えられる。

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親子で工作を楽しんだり、外国人ママが講師をつとめるズンバや料理などの講座も。

Sharing Caring CURTURE代表の三坂慶子さん。約8万9千人の外国人市民が暮らす横浜市内で、4年前から「多文化親子交流会」や「多文化カルチャー講座」を開催してきました。「料理、音楽、ダンス、手づくりおもちゃなど、好きなことや興味・関心のあることで多様な親子が交流できる。そんなコミュニティをめざして活動しています」(三坂さん)。

こだわったのは、日本人も外国人も、自分らしさを発揮して主体的に参加できる場づくり。これまで、中国、韓国、台湾、フィリピン、タイ、バングラデシュ、インドネシア、カナダなど、さまざまな国出身のママたちが、特技を活かして、魅力的な企画を次々と生み出してきました。

 

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最近では、雑誌編集経験のあるインドネシア人のママや、イギリスでの留学経験があるグラフィックデザイナーの日本人ママが中心となって、海外出身のパパ・ママに役立つ子育てガイドブックの制作に取り組んでいるそうです。

じつは、三坂さん自身も小学校入学を控えた6歳の娘さんをもつ現役ママ。多忙な中、これだけの活動を展開するパワーの源は、いったいどこにあるのでしょうか。

Difference is Good!

その原点は、年長から小学3年生までの4年間、父親の仕事の都合で、アメリカのカルフォルニア州中部にあるフレズノという町で暮らした経験にあります。

「出国前に『はじめての英語』というテキストを手渡されましたが、まったく興味を持てなくて。知識ゼロの状態で渡米しました」。そんな三坂さんにとって、生涯の宝となる原体験をつかませてくれたのが、現地校で放課後に補習授業を行うクラスを担当したロシア系アメリカ人のクボルキン先生でした。

クボルキン 先生、弟さんとの思い出の一枚。

「クボルキン先生は私にとって人生の恩師です。右も左も分からなかった私に、徹底的な補習をしてくれました。スパルタだったけれど、とても楽しかった。おかげで自然な発音を習得でき、英語の本を読むのがどんどん楽しくなって。小学校に上がる頃には、本屋さんでペーパーバックを買ってきてほしいと、母にねだるまでになっていました」。

友人づくりも悩んだ記憶は一切なし。2歳年下の弟と近所の公園に通ううちに、自然と仲良くなれたのだそう。「日本と違ってスキンシップが豊かなので、最初は戸惑ってしまいましたが、みんな垣根なく接してくれましたね」

 

 

 

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すんなりと新しい土地に馴染めた三坂さんにとって唯一嫌だったのは、学校で日本文化について取り上げられることでした。「ケイコが生まれた日本では……」と紹介されるたび、みんなと違う「ニホンジン」であることが恥ずかしくて、逃げ出したくなったと言います。

しかし、そんな三坂さんの葛藤を知った日系3世の担任の先生、ミセス・ハヤシが、きっぱりとこう言ってくれたのです。

「Keiko, Difference is Good !!(ケイコ、違うからこそ良いのよ!)

目からウロコの一言。違うって、悪いことじゃないんだ。堂々としていていいんだ。そう気づかされた三坂さんは、心から自信を持てるようになりました。

左が小学2年生、右が3年生の頃。ミセス・ハヤシの一言で表情にも自信が満ち溢れるように。

一方、三坂さんのお母さんは英語がほとんど話せず、当初は日本人としか交流していませんでした。「母は、帰国後の学校生活をとても心配していました。私と弟は家庭内でも英語で話すようになっていたので、このままでは母語である日本語を忘れてしまうのではないか…と。友だちがせっかく家に遊びに来てくれたのに『日本語の勉強があるから』と追い返してしまうこともありました。今になって思うと、親が子育てをしながら新しい言語を習得したり、異文化で一から知り合いを作っていくなんて、よほどの勇気とモチベーションがなければ難しいことですよね」。

左が小学2年生、右が3年生の頃。ミセス・ハヤシの一言で表情にも自信が満ち溢れるように。

そんなお母さんを変えてくれたのは、弟の同級生の親で、教会の牧師夫婦でした。「言語の壁に立ちすくみ、一歩踏み出せずにいた母を、教会で開かれる料理教室に誘い出してくれたんです。それ以来、これまで和食中心だった食卓に、食べたこともない人参ケーキやキャセロール(煮込み料理)が出てくるようになって。『お母さんも、ついにアメリカ人の友だちができたんだ!料理ってすごいな』と、嬉しくなったのを覚えています」。

楽しい遊びや文化活動を通して、友人の輪が広がったこと。その中で、新しい言語や文化を自分のものとして取り入れてこれたこと。その喜びの体験は、今も色あせずに、三坂さんの心の中で輝きを放っているのです。まさに、幼児期の重要性を物語るエピソードと言えるでしょう。

 

 

日本では、Difference is NOT Good !?

さらに中学生になると、難解な文法用語でがんじがらめの英語の授業に大混乱。一転して、英語は苦手科目になってしまいました。「アメリカで暮らしていたことも、周囲には隠していました。本音を話せるのは、放課後に通っていた英語スクールだけでしたね」。

「英語って、もっと楽しかったはずなのに……」。大学卒業後、子ども英語講師として働き始めてからも、日本式の英語教育になじめず悶々としてきた三坂さん。その後、インターナショナルプリスクールでのスタッフ、公立小学校の日本語指導等協力者、小学校外国語活動講師、小学校教諭と、さまざまな教育現場を経験しながら歩むべき道を模索するうちに、ふと気づいたのが日本に暮らす外国ルーツの親子の存在でした。

「日本の子育てコミュニティに入りづらいと感じているお母さんたちや、日本文化に触れる機会の少ない子どもたちの姿を通して、アメリカで暮らし始めた当初の思いが蘇りました。また、私自身、妊娠を機に職を離れ、日本人でありながらも社会から切り離されたような孤立感を覚えていました。そこで、言語や文化の多様性をプラスに感じられる、多様な親子が気軽に集える場を作りたい!と思い立ったんです」。

お母さんたちが楽しく交流する姿に、子どもの意識もグンと変わる。

Global Mom’s203活動を始めて4年。自分自身も、一人の母親として、我が子に“Difference is Good”という思いを伝えていきたいと考えていた三坂さんですが、一筋縄にはいかなかったようです。

「娘が5歳になった頃から『ママ、英語はいや!』『日本語で話して!』と、強く拒否するようになって。無理強いはできないと思って、しばらくは英語を使わずに過ごしていました」

しかし最近になって、その娘さんが、みずから英語を学ぶように。きっかけは、やはり「友人」でした。「クリスマスイベントのとき、娘が外国人のママに『my name is…』と自己紹介をしていたんです。会話も、それなりに成り立っていて。『えっ!?そのフレーズ、いつの間に覚えたの?』と、ただただ驚きました」。

さまざまな国出身の親子と楽しさを共有できた娘さん。これまでとは一転、「もっと英語を教えて!」と、せがんでくるようになったのだそう。「反発していた頃は、言葉の意味が分からなくて苛立っていたようなのですが、今では『分からなければ聞いてみよう』という姿勢に変わってきました。私が勧めるまでもなく、大好きな歌が入っている英語教材を広げて、何度も聴きながら一緒にリピート練習しています」

お母さんたちが「差異」を楽しむ姿に触発されて、子どもたちが未知なる世界に一歩踏み出す。Sharing Caring CURTUREでは、そんなグローバルマインドが、確かに育まれつつあるようです。

Sharing Caring CULTURE http://sharingscc.wixsite.com/sccjapan



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